ロシアのウクライナ侵攻を契機に欧州各国は防衛費を大幅に増額し、防衛産業の成長が加速しています。一方で、防衛分野のデジタル化はまだまだ遅れており、今後AIやサイバーセキュリティ技術の導入が進む見込みです。こうした変革期に、防衛テクノロジー分野への投資が長期的成長をもたらす可能性が高まっています。
欧州各国の防衛費増額とそのインパクト
近年、世界の安全保障環境は大きく変化しています。特にロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、欧州諸国の防衛意識が急激に高まりました。これまで冷戦後の「平和の配当」を享受し、国防費を抑制していた欧州各国も、今や積極的に防衛予算を増額しています。
厳しい安全保障環境において、必要な防衛力を自国で有することは他国への抑止力となり、力を背景とした現状変更を阻止することができるでしょう。この流れは一時的なものではなく、今後も長期的に続くと予想されています。

北大西洋条約機構(NATO)は、加盟国に対し国内総生産(GDP)比2%以上の国防費支出を求めています。2022年以降、ドイツやフランスなど主要国がこの目標達成に本腰を入れ始め、ドイツは2024年にNATOの求める2%目標を32年ぶりに満たしました。こうした動きは他の欧州諸国にも波及しており、欧州全体の防衛産業市場の拡大が見込まれています。

防衛分野のデジタル化はまだ発展途上
世界的に軍事費が過去最高水準に達している一方で、防衛分野のデジタル化は他の産業に比べて大きく遅れています。実際に、ソフトウエアやデジタル技術に割り当てられる軍事予算は、全体予算のわずか1%未満に過ぎません。しかし、各国の軍隊はこの課題を認識し始めており、人工知能(AI)やサイバーセキュリティ、デジタル戦争への取り組みを加速させています。
最近のウクライナや中東での紛争では、リアルタイムでデータを活用した意思決定や情報分析が戦局を左右するなど、テクノロジーの優位性が明確に示されました。こうした背景から、今後は防衛ソフトウエアやインフラの大幅な強化が期待されます。
技術革新は運用面だけでなく、コスト面でも戦場での優位性を生み、防衛テクノロジーの戦略的重要性は一段と高まっています。そのため、世界的にも、特に欧州では先進的な防衛システムやインフラを手がける企業が継続的な投資の恩恵を受けると見込まれています。
ラインメタル(Rheinmetall/ドイツ)
ドイツ最大の弾薬メーカーであり、欧州の防衛支出増加を背景に近年急成長しています。2023年にはドイツ軍と歩兵システムのデジタル化に関する史上最大規模の契約(最大31億ユーロ、約5,000億円)を締結し、契約は2030年末まで有効で同社の成長をさらに後押ししています。
タレス(Thales/フランス)
フランスの大手防衛電子機器メーカーで、防衛事業が売上高の50%以上・利益の約60%を占める業界トップクラスの企業です。近年、欧州連合(EU)の防衛支出拡大を背景に受注が増加しています。英国海軍向け艦隊通信で2億5,000万ポンド(約483億円)の契約を獲得し、さらにサイバーセキュリティ分野強化のためImperva社を買収しています。
BAEシステムズ(英国)
英国を代表する防衛・航空宇宙企業で、ロシア・ウクライナ戦争以降、EU諸国の防衛支出増加の恩恵を受けています。戦闘機や潜水艦、フリゲート艦などの受注が好調で、2024年には売り上げが過去最高の283億3,000万ポンド(約5.5兆円、前年比14%増)に達しました。
新規受注も年間337億ポンド(約6.5兆円)に上り、受注残高は778億ポンド(約15兆円)と、持続的な成長が続いています。
※個別銘柄を推奨するものではありません。
防衛テック分野は長期的に成長
世界の地政学的不確実性が高まる中、防衛支出は今後10年間、長期的に拡大する見込みです。米国は戦略的優先事項を再調整し、欧州の一層の軍事的自立を促す可能性が高く、その結果として防衛関連産業への需要が増加し、欧州最大級の防衛請負業者の一部が恩恵を受けるとみられます。
ソフトウエアや部品、ハードウエア、ドローン、自動運転、センサーなどの防衛テクノロジー・バリューチェーンに属する企業は持続的かつ予想を上回る成長を遂げる可能性があるとグローバルXは考えています。
こういったグローバルな防衛秩序にある、数十年に一度の変革を利用してリターンを上げようとする投資家にとって重要なのは、防衛テクノロジーに焦点を当てた多角的なグローバル・アプローチをとることであると考えています。
<関連ETF>
グローバルX 防衛テック ETF (SHLD)
<ご参考>
当記事は米国Global Xが執筆したリサーチ&レポート『欧州の再軍備が防衛テックの追い風に』をGlobal X Japanが要約したものです。
<ご注意事項>
当資料は、本邦の居住者への証券投資一般等に関する情報提供を目的としたものであり、海外ファンド等(本邦での募集の取扱等に係る金融庁への届出等がされていないものを含みます。)についての勧誘を目的としたものではありません。また、当資料は金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。当資料で記載されている内容、数値、図表、意見等は資料作成時点のものであり、信頼できると考えられる情報源から作成していますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。運用実績などの記載内容は過去の実績であり、将来の成果を示唆・保証するものではありません。また、税金、手数料等を考慮していませんので、投資者のみなさまの実質的な投資成果を示すものではありません。また、当資料の内容についての著作権は、当社その他当該情報の提供元に帰属しています。電子的または、機械的方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製、引用、転載または転送等を禁じます。個別の商品に関して、より詳細な情報が現地のウェブサイトに掲載されていることがありますので、必要に応じてご参照ください。当資料の内容につきましては、設定又は上場されている国、地域の事情により、変更又は更新作業が遅れている場合があります。海外の証券取引所に上場されている商品の購入を希望される場合は、本邦の取扱い金融商品取引業者へお問い合わせいただき、上場有価証券等書面またはその他の開示資料の内容を必ずご確認の上、ご自身でご判断ください。投資信託は、値動きのある有価証券等に投資しますので、基準価額は大きく変動します。したがって、投資者のみなさまの投資元本が保証されているものではありません。信託財産に生じた利益および損失は、すべて投資者に帰属します。投資信託は預貯金とは異なります。GLOBAL Xは、Global X社の登録商標です。電子的または、機械的方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製、引用、転載または転送等を禁じます。Global X社は、米国証券取引委員会に登録されている投資顧問業者です。
Global X Japan株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第3174号 一般社団法人日本投資顧問業協会会員 一般社団法人投資信託協会会員
欧州の再軍備が防衛テックの追い風に
- 今回のレポートはいかがでしたか?
- コメント
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。 詳細こちら >>